抑制不能、傲慢な願望を
何故、こんなにも死を望む?
何故、死ぬように急ぐ?
何故?
父親を殺したから?
『罰』を与えて欲しかったから?
俺にはその答えが見つからない。隣で眠る親友自身の中にしかない。だから、俺に出来る事は。
「俺は……赦す」
赦し、生きる事を示すだけだった。それでも、スザクの中にその与えたものが残ったのかも解らない。もしかしたら、他の者が与えているかもしれない。
しかし、そんな事はもう関係ない。生きるしかないんだ。俺が命じたから。絶対遵守の力により『生きる』事を強制したのだ、『生きろ』と言われればスザクの意志とは関係無くその力が働くのだろう。
(すまない…)
唇は動いたのに、声にならない。喉が渇いて、音にならない。
嗚呼、どうして。
「…ルルーシュ?」
掠れた声が、名を紡ぐ。
「ルルーシュ、どうかした?」
「……なんでもない」
「そんな訳ないだろう? そういう顔をする時の君は、絶対何かあるんだ」
ね、と確信めいてスザクの手が俺の腕を掴んだ。
「言いたくないだろうから聞かないけど」
掴む手の強さが増しても、その言葉は、態度は、優しい。俺が踏み込まれたくないところ、と解っているから。それは、ありがたい事であると同時に、哀しい事、と最近気付いた。踏み込まれれば、その拍子に言えるのではないか、と浅はかにも思ってしまったから。何かきっかけさえあれば、言ってしまえる。ただ一言。
『生きろ』
と。一度その身体を抱き締めながら言ったが、それきりだった。次に言えた時は、逆らえぬ力を込めて。結局、この二度だけ。
「……っ、」
「なに?」
言ってしまえたらいいのに。面と向かって、思うままに。そうしたら。
(変わってしまうだろうか、俺もお前も)
それでも、人は変化なしでは生きていけないのかもしれない。スザクが変わったように。俺も変わったように。周りも変わって。それで、生きていく。不変は、望めない。なら、せめて。
「スザク、」
口付けに、そっと願いを込めて。強い、重い願いを。
『生きろ』
小さく、本当に小さく唇に乗せた言葉に、翠の眼が赤く煌めいた。それは、お前の意志とは違う、強制により生まれた願いが望むもの。それでも、俺は願う。
生きて、と。
Closed...