心を友を捨て、仮面を被れ。弱者に望まれた救世主よ
スザクからの電話。その電話越しに告げられたのは、俺への宣戦布告。『ゼロ』を殺す、という意志。
「ルルーシュ、君は殺したい思う程、憎い人がいるかい?」
(俺、なんだろう)
「ああ…いるよ」
俺とナナリーを捨てた、憎き父、ブリタニア皇帝。あの日から、ずっと心に秘めていた。ナナリーが幸せに暮らせる場所を求めて。憎んでも憎みきれない程の憎悪を抱きながら。
「今、僕は憎しみに支配されている。人を殺す為に、闘おうとしている。皆がいるトウキョウの空の上で、人殺しを……だから、」
「憎めばいい、ユフィの為だろう」
(ユフィを殺した俺を、殺しに来る。それがお前)
「それに、俺はとっくに決めたよ。引き返すつもりはない」
(引き返すには、遅すぎた。全て)
「…ありがとう、ルルーシュ」
(さあ、俺を憎め)
それが、お前の生きる意味なのだろう、今。なら、受け入れる。
「気にするな。俺たち……『友達』だろう」
「七年前から、ずっと」
もう『友達』の意味は、違う。七年前とは、違う。
「じゃあ、またあとで」
もう『あとで』なんてない。今から、お前は本当に俺の敵。そして、対峙する。ランスロットとガウェインで。アーサー王の円卓の騎士であるガウェインは、同じ円卓の騎士ランスロットと互角の存在。だが、最後には闘う。俺たちも、この運命を辿るのだろうか。いや、もう辿っている。
「スザク、俺の手はとっくに汚れてるんだよ」
ギアスの力を手に入れてから。しかし、お前はまだ俺が綺麗だ、と信じて疑わないのだろう。
「それでも、向かってくるなら構わない。歓迎してやるさ」
(『友達』……)
「……俺たちは、『友達』だからな」
もう、元に戻れない。全てが、進み過ぎているから。
もう、『友達』の意味も違う。『敵』になったから。
望んでいた、破壊と喪失。
それの為には、心が邪魔になる。だから、消し去ってしまえ。
(なのに……胸が、痛い)
押しつぶされそうな程、胸を締め付ける、痛み。それを止める方法なんか、知らない。ただ、その痛みに喘ぐだけしか出来ない。
(嗚呼、スザク)
お前なら、この痛みを止められるか? 俺を殺そうと憎むお前なら。
それでも、俺は歩みを止める訳にはいかない。進むしかない。引き返せないのだから。
「だから……」
お前と、闘う。心さえも捨てて。
「殺されるなら……」
スザク、お前がいい。他の誰かに殺されるくらいなら、お前が。もう肩を寄せ合う事が出来ないのなら。
(嗚呼、懐かしい)
駆け回った枢木神社の境内。
ナナリーとスザクと一緒に暮らした、約一年。
そして、再会した、この間。
(もう全て、幻、なんだ)
繋いだ手のぬくもり忘れ、総てを欺き闘え、と仮面の上の仮面が嘲笑った。
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