ただ、一つ
「ルルーシュ、手熱い」
俺の手に触れたスザクからの一言。
「眠いんだろ?」
その一言は、俺の眠りを助長しようとする。我慢しているというのに。暖房の効いた室内に居るんじゃなかった。
俺が居るのは、生徒会室。中央に置かれた大きな机にいて、更に隣にはスザクが座っている。他のメンバーはそれぞれの用があり、ついさっき退室した。イコール、誰ももう来ないという事だ。
その状況から得られる選択は、このままここで少し寝るか、自室に戻り寝るか。
ここは充分にあたたかいからこのまま寝ても大丈夫だろう。しかし、スザクがいる。このまま寝てしまえば、確実に雑用を片付けているスザクは一人に。それは申し訳ない。だからと言って、自室に行ってしまうのも、スザクを一人にする結果となる為、申し訳ない。
どうすればいいか。様々な選択は浮かぶものの、それは全て良い結果とならない。堂々巡りを繰り返して、結局は先の二つの選択に戻った。
「ルルーシュ」
俺の考えを阻むように名を呼ばれる。振り返ると作業の手を止めたスザクが俺を見ていた。なんだ、と問えば、またスザクの手が俺に触れる。触れたところは、手ではなく何故か頬だったが。
「寝ていいんだよ」
それは、とても魅力的な誘惑。それでも。
「お前がまだ仕事してるのに寝られるか」
スザクの手元を見れば、まだ生徒会の仕事が残っている。それを見てしまえば尚更寝るのが申し訳なくなる。
「眠そうな君を隣にしながらじゃ進まない」
俺の考えとは裏腹に、そんな言葉の次に俺の頭がスザクの肩に乗った。いや、乗せさせられた。
「ちょっ、」
「寝ていいから、ね?」
その言葉と頭を押さえる手が、ここで寝る事以外を許さない。だったら、存分に使わせて貰おうではないか。
「……使ってやる」
瞼を下ろしそう小さく言えば、少し笑う声が聞こえて、眠りを誘惑する最後の呪文をその声が紡いだ。
「おやすみ、ルルーシュ」
そこからは、一つ以外覚えていない。ただ、あたたかな夢を見た事だけ。ささやかだけど、大切な。
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